Abstract
【はじめに・目的】複数の患者情報を統合し,筋道を立てて判断する論理的思考は,質の高い理学療法を実施する上で重要な能力とされている.この能力は理学療法教育でも重視されており,理学療法士国家試験の実地問題でも求められる.一方,国家試験対策では反復学習が中心となりやすく,思考過程を整理する機会が十分でない可能性がある.そこで本研究では,論証を「主張」「根拠」「裏付け」などで構造化するToulminモデルに着目し,理学療法士国家試験の実地問題に対するToulminモデルの適用可能性についてLLMを用いて検討した.
【方法】第52〜61回理学療法士国家試験の実地問題400問のうち,図・グラフ・写真を含む問題,計算問題,不適切問題を除外した137問を対象とした.LLMにはGemini 3.1 Proを使用した.Toulminモデルを用いる条件(Toulmin条件)と,用いない条件(非Toulmin条件)を設定し,各条件は別アカウントで実施した.Toulmin条件では,「主張」「根拠」「論拠」「裏付け」「限定」「反論」を用いて各選択肢の推論を構造化させた.非Toulmin条件では,各選択肢の正誤理由を説明させた.正答率を比較し、不正解問題については推論過程をもとに誤答要因を検討した.
【結果】Toulmin条件の正答率は132/137問(96.4%),非Toulmin条件では129/137問(94.2%)であった.Toulmin条件のみ正解であった問題は4問,非Toulmin条件のみ正解であった問題は1問,両条件とも不正解であった問題は4問であった.s条件で不正解であった4問中3問は,指標をもとに解答を導く問題であった.また,Toulmin条件のみ正解であった問題では,非Toulmin条件において,一側面のみに着目した極端な判断がみられたのに対し,Toulmin条件では,多面的に判断する傾向がみられた.一方,Toulmin条件のみ不正解であった問題では,問題文にない前提を補完する傾向がみられた.
【結論】Toulmin条件では非Toulmin条件より正答率が2.2ポイント高く,Toulminモデルを用いることで,思考過程の整理を促し,一部の誤答を抑制できる可能性が示唆された.特に,一側面のみに着目した極端な判断を軽減できる可能性が示された.一方で,問題文にない前提を補完して推論する傾向もみられ,問題によってはそれが誤答につながる可能性が示唆された.また,指標を用いて解答する問題では,Toulminモデルのみでは十分な支援が行えない可能性が考えられた.以上より,Toulminモデルは実地問題における推論過程の構造化を支援する可能性がある一方で,問題特性に応じた追加支援方法の検討も必要であると考えられる.
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Information
Book title
第4回デジタル理学療法学会学術大会
Date of issue
2026/06/20
Date of presentation
2026/06/20
Location
兵庫県神戸市(甲南女子大学)
Citation
上村 真央, 三藤 優実, 高橋 可奈恵, 松下 光範. LLMを用いた理学療法士国家試験実地問題に対するToulminモデルの適用可能性の検討, 第4回デジタル理学療法学会学術大会, No.O-4, 2026.