研究報告

理学療法推論に対する情報認識支援の効果:リスク列挙と統合・解釈に及ぼす影響の差異

Abstract

【目的】理学療法推論序盤に対する部分的支援(判断に必要な情報認識の支援)が、推論のどの成分に効果を示すかを検討した。特に、見落とし箇所と優先度提示による支援が、統合と解釈の記載とリスクを想起する能力に及ぼす影響差に着目した。 【方法】急性期病院の若手理学療法士12名を対象とし、模擬症例を扱った3段階のアンケート調査を行った。1段階目は診断名(脳梗塞)が記載された模擬処方を被験者が確認し、理学療法を行う上で必要な情報収集項目、検査項目の列挙を行う。2段階目は被験者が選択した情報、検査結果を提示した上で、統合と解釈の記載とリスクの列挙を課題として与えた。3段階目では被験者の未選択情報と検査結果の優先順位が提示された支援シートを提供した上で、統合と解釈の記載とリスクの列挙を同一模擬症例で実施した。統合と解釈の文章については盲検化した上で、大学教員が基準化されたルーブリックを用いて15段階で採点した。 【結果】支援シートを活用前後である2段階目と3段階目を比較した結果、リスク列挙数においては向上10例、変化なし2例で改善が多かった。一方、統合と解釈の採点は向上5例、変化なし4例、低下3例で、一様な改善を認めなかった。 【考察】判断に必要な情報認識を目的とした支援シートを活用した結果、リスク列挙と統合と解釈の記載では反応が異なった。リスク列挙数に関しては、情報/検査結果の見落としに加え、優先度が提示されたことにより、被験者が各実測値の異常度を理解しリスクの判断が可能であり、支援シート活用後にリスク列挙数の増加がみられたと考える。一方で統合と解釈の文章に関しては支援シートの効果にばらつきを認めた。採点点数を確認すると採点が低いものほど変化が乏しい傾向にあった。これは実測値の優先度が提示されたとしても、症例の問題点を論理的に推論することに直結せず、理学療法士の到達度に応じた支援が必要であることを示唆していると考える。そのため、学校教育の到達度として、多くは異常度を認識することはできるが、症例に合わせた理学療法推論の展開には個人差を認めるため、臨床の症例に即した推論能力の教育が必要であると考える。 【結論】判断に必要な情報認識支援は、見落としと異常度の認識を促すことには有効であったが、統合と解釈においてはばらつきを認めた。本知見は、初学者教育において到達度に応じた段階的支援の必要性を示唆するとともに、学校教育における臨床に即した教育体制の重要性を提起するものであると考える。

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Book title

第19回全国大学理学療法学教育学会大会

Date of issue

2026/03/20

Date of presentation

2026/03/20

Location

東京都荒川区(東京都立大学荒川キャンパス)

Citation

堀 寛史, 吉田 龍洋, 畠山 駿弥, 高橋 可奈恵, 杉本 明文, 松下 光範. 理学療法推論に対する情報認識支援の効果:リスク列挙と統合・解釈に及ぼす影響の差異, 第19回全国大学理学療法学教育学会大会, 2026.