学位論文

接触抵抗式感圧センサを用いた手技療法動作の定量化に関する研究

Abstract

手技療法の指導の際,手技療法動作(e.g., 身体的感覚に基づいた力の強さや角度)は動作指示語(e.g., 強く押す,グーッと押す)を用いて伝達されている. このような伝達手法では,指導者が学習者に対して意図した動作と強弱を適切に伝えることは容易ではない. そこで,本研究では任意の動作に対して適切な動作指示語の関係を明らかにし,手技療法指導の質向上に寄与することを目指す. これにより,指導者が学習者に対して任意の動作を伝達したい際に,その動作に対応するより適切な手技療法動作指示語を選択・指導することが可能になる. 本稿では,海老名ら\cite{Ebina:2024}の動作と動作指示語の関係分析の結果を参考にし,手技療法における動作指示語が指圧動作に及ぼす影響を調査する. 具体的には,(1)手技療法動作を定量化するシステム(以下,手技療法動作定量化システムと記す)を構築し,(2)構築したシステムを用いて定量化された手技療法動作と動作指示語の関係を明らかにする. これにより,これまで言語表現では正確に伝達できなかった情報を,手技療法動作定量化システムで得られる数値情報で補完することで,より正確な伝達が可能になることが期待される. 手技療法定量化システムでは接触抵抗式感圧センサアレイで取得したデータから,Long Short Term Memory(LSTM)により手技療法動作時の圧力と角度を推定する. 接触抵抗方式センサアレイは電気絶縁のための保護層,縦並びの導電糸層,横並びの導電糸層,感圧層から構成されており,縦横の導電糸層が交差する部分が検知点となり,256点の圧力を検知することが可能である 試作したセンサアレイから取得したデータを用いて,力の強さと角度を推定するLSTMモデルの構築を行う.まず,手技療法に必要な圧力測定範囲(0〜50N程度)と角度の測定範囲(対象部位に対して0〜40° 程度)を達成するため,クロストークによる影響を活用することで複数センサ値から圧力の推定を行う. 多様な強さと角度で加圧することで256点の58587タイムステップの時系列センサデータを取得した. 取得したセンサデータに対して,それに対応する圧力値(0〜50 N程度)と,法線力を0° とした場合のx軸角度(-40〜40° ),y軸角度(-40〜40° )を教師データとして付与した. これらのデータを,各角度に対する割合が均一になるよう学習データ80%,検証データ10%,テストデータ10%に分割した.その後,Optunaを用いて最適化したハイパーパラメータの組み合わせでモデルの構築を行い,テストデータを用いてモデルの評価を行った. その結果,圧力値のMSEが5.19,R2スコアが0.95,x軸角度のMSEが8.30,R2スコアが0.94,y軸角度のMSEが11.74,R2スコアが0.88となった. 手技療法動作指示語が指圧動作に及ぼす影響を明らかにするため,手技療法定量化システムを用いて,手技療法動作指示語から,対象者が想起した手技療法動作(e.g., 力の強さ,力の角度,圧力変化,指圧時間)の定量的分析を行った. 専門家3名を対象に手技療法動作定量化システムに対して15種類の指示語に基づく指圧動作を行ってもらい,圧力・角度のデータを取得し,分析を行った. その結果,多くの指示語間で手技療法動作指示語から対象者が想起した手技療法動作が有意に異なるペアが確認された. また,力の強さに関する指示語は漠然とした指圧力を伝達できるものの,詳細な指圧力の伝達が難しい可能性が示唆された. さらに,15個全ての手技療法動作指示語において,一定のばらつきが見られ,個人差や個人内差が見られた. 「体重3kgくらいかけて押す」「面に向かって15度くらいの角度で押す」は,定量的表現を用いることで個人差が小さくなる可能性が示唆された.

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Information

Book title

2024年度関西大学大学院総合情報学研究科修士論文

Date of issue

2025/02/17

Date of presentation

2025/02/17

Citation

田中 瑠彗. 接触抵抗式感圧センサを用いた手技療法動作の定量化に関する研究, 2024年度関西大学大学院総合情報学研究科修士論文, 2025.