Abstract
本稿では,発話の役割を要素とするベクトルを用いて漫画の登場人物間の関係性を表現する手法を提案する.多くの場合,二者の関係を表現する場合には無向関係が用いられている.このような無向関係は,登場人物間の関係性を簡潔に言語化するうえでは有用な表現方法である.しかし,漫画の登場人物間の関係性は必ずしも無向な関係として表現することが妥当な関係ばかりではなく,非対称な関係性も多く描かれている.そこで本稿では,登場人物二者間の発話に着目して非対称な関係の表現を試みた.発話は,発話者から話相手への感情や意図の伝達といった有向の役割があるため,発話を参照することで,発話者にとっての話し相手に対する捉え方(すなわち,有向関係)が表現可能になると考えた.本稿では,小規模ながらそれぞれの発話に発話の役割を付与したデータセットを構築し,提案手法の有用性について議論した.