Abstract
タブレットやスマートフォンなどの携帯ディジタル端末の普及に伴って,このような端末の上でコミック(以下,電子コミック)を閲読することが一般的になってきている.出版月報2017年2月号によれば,2016年度の紙媒体のコミックが1,947億円(前年比7.4%減)であったのに対し,電子コミックの販売金額は1,460億円(前年比27.1%増)に上り,ユーザの閲覧形態が紙媒体から電子媒体へと移行している様子が顕著に表れている.電子コミックは,ディジタル端末上でリアルタイムに処理可能であることから,紙媒体のコミックに比べ高い拡張性と応用性を有していると考えられる.例えば,従来のコミックの枠にとらわれない表現(e.g., 話の展開に応じて内容を切り替える,コマに動きを付与する)や自らの環境に最適化させた利用(e.g., 読み手の母語に応じて言語を切り替える,文字の大きさやフォントを変更する)が期待される.しかし現状では,多くの作品は単に紙媒体のコンテンツをそのままディジタル化した静的なものであり,ディジタルコミックの可能性を十分に生かせる状況にはない.
コミック工学は,こうした背景のもとで進められている一連の研究を指す概念であり,ディジタルコミックをより活用するための技術やその応用可能性の追求を目的とした技術横断的な取組みである.本稿では現状の取り組みや活用可能なリソースについて紹介する.なお,厳密にコミックを対象とした研究に限定せず,コミックと関連が強いアニメやイラストなどについても言及する.
Information
Book title
人工知能学会誌
Volume
32
Pages
999-1007
Date of issue
2017/11/01
Keywords
コミック工学 /Citation
松下 光範, 山西 良典, 松井 勇佑, 岩田 基, 上野 美貴, 西原 陽子, 中村 聡史. 私のブックマーク コミック工学, 人工知能学会誌, Vol.32, No.6, pp.999-1007, 2017.